『千段』

オリジナルの小説や詩をちょこちょこ書いています。

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『One』(詩)


それはまるで、消えない燈(ともしび)
それはまるで、枯れない花



春の蕾のほころぶ気配に
夏の朝の青の濃度に
わたしのこころは、あなたをふと思い出す
秋の涼しい風のかおりに
冬のコートのあたたかな手触りに
わたしのこころは、あなたと居た日々に戻る

なんて、たくさんの、
あらゆる場所に、
あなたは存在することだろう
ちかちかまたたく自販機のあかり
靴の下に踏む小石
踏み切りの遠くから電車の音
ビルの窓に映る夕焼け
悲しい気持ちの帰り道
じんわり湧いて満ちる歓び
その、どこにでも、
あなたが居る

日が昇って日が落ちて
今日も一日が過ぎる
日が昇って日が落ちて
明日もきっとあなたを思う
あなたを思う気持ちをずっと
毎日積み重ねてゆける
それはまるで、消えない燈
それはまるで、枯れない花


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『no where』(詩)


 ひたりひたり、寄せては返す
 波の向こうにひかる星を見てた

 ここまでずっと歩いて来たよ
 靴ずれの足にしょっぱい波がしみて痛い

 とおくとおく、きらきら光る貴方
 手を伸ばしても届かないのはどうしてなんだろう
 世界のしくみはどうしてもわからない
 きらきら光ってそこに見えるのに

 泣いてもいいの?
 笑ってもいいの?
 問いかけても星はきらきらうなずくだけで

 進んでもいいの?
 止まってもいいの?
 わからなくて寝転がると砂浜は背中にひんやりつめたい

 ここまでずっと歩いて来たよ
 分かれ道はいままでも何度かあった
 ここからずっと歩いて行くよ
 どんな歌も今は思い出せないけれど

 ひたりひたり、寄せては返す
 波の向こうにひかる星を見てた
 貴方はきらきらうなずくばかり

『君と手を』(詩)


 花が咲いて、散るまでの、
 ほんのつかの間。
 月が沈んで、日が昇るまでの、
 たったそれだけのあいだ。
 僕たちは、手を繋いだ。

 その、ほんの、
 いくばくかの時間を。

 鼓動を重ねて。
 名前を呼んで。
 まなざしを交わして。
 体温を分け合って。

 それは、なんて、
 せつない、
 あたたかい、
 いとおしい、
 やさしい、
 幸福な約束だったことだろう。

 どこに行ってもいい、
 何をしたって構わない、
 そんなルールの世界の中で、
 僕の手は君と繋がった。
 だいすきだよってぎゅっと握ると、
 だいすきだよって握り返してくれた。


 ああ、ねえ、
 花が咲いて散るまでのあいだ、
 月が沈んで日が昇るまでのあいだ、
 どんなふうに世界が輝いたか。
 僕はずっと覚えていようと思う。

 だいすきだよって心臓が鳴る。
 鐘の音みたいに世界に響いて、
 はるかな余韻が空気に溶ける。
 この鼓動が、君と僕の過ごした時間の、消えない、証になるだろう。
 だから。


 花が咲いて、散るまでの、
 ほんのつかの間。
 月が沈んで、日が昇るまでの、
 たったそれだけのあいだ。
 僕たちは、手を繋いだ。

 それは、まるで、
 まばたきのような、刹那の時間だけれど、

 鼓動を重ねた。
 名前を呼んだ。
 まなざしを交わした。
 体温を分け合った。

 そのすべては、
 僕の心臓に刻まれていて、
 だいすきだよって鳴り続けるから、
 僕がここにいる限り、
 そのすべてが永遠。

『はたらけどはたらけど』(詩)


1/1,000

「船長さんはどうして、海の向こうへ行くの?」
ぼうやが尋ねると船長さんはにやりとした。
日に焼けた鼻の頭は鷲みたいに尖っている。

「いいかいぼうや、それはね」
「船長ってのは、そういうもんだからさ」
「海の向こうへ、行くものなのさ」

嘆きの夜も、嵐の朝も。
輝く夏も、氷れる冬も。
波また波を行き行きて。
行くのさ。あの、向こうへ。
それが、船長ってものだから。
行くのが俺の、役割だから。

でもって、行きたくて、行くのさ。
男というのは、海へ出るのさ。
波また波の、はるか向こうに。
何があるのか見つけたいのさ。



漕いでも漕いでも、海は尽きず広がる。
はたらけどはたらけど、波また波。
その向こうへ! 船長さんが行く。
にやりと鷲鼻も鋭く。

『夜汽車』(詩)


5/1,000


県境には、大きな川が流れている
橋を渡れば向こうが我が町
うすももいろの夕闇のなかには、
既にして幾百の電燈が灯っている

おかえりなさあい
ただあいま
おかえりなさあい
ただあいま

川の向こう明かりの中
今日もハイヒールや革靴が
くたびれた骨や筋肉を載っけて
蕎麦屋の出前みたいにゆらゆらと

あっちこっち方向音痴みたいなコウモリ
どこへ行きたいの? どこか遠くへ!
でもセミの声がしゅわしゅわ空気を震わすから
超音波のGPSは狂いっぱなし

河川敷のグラウンド
昼間ちび共が声枯らして走ったダイヤモンド
並木も遊歩道もじんわり闇に沈むよ
ぬるり鏡のような水面

もういっぽん向こうの橋には
なんて長い、夜汽車が光りを撒いて、行くよ
どこへ行きたいの? どこか遠くへ!
空を駆ける銀の龍のように
銀河鉄道、疾走する、疾走する、県境を

そのスピードの下には、大きな川が流れている
橋を渡れば知らないところへ行ける?
うすももいろの夕闇のなかには、
まだ見ぬ郡星の夜と金襴の夜明けが眠っている

『RUNNER』(詩)


4/1,000


ああなんて、皆皆、ランナーの必死の姿は美しい。

僕はまた、追い抜かれて周回遅れ。
もう、何周遅れてるのかなんて判らないほど。
あのコーナーまでは走ろう、って思うのに、
横っ腹が痛くなったらすぐに歩いちゃう。
気を取り直して次の直線から走るよ、って思っても、
あともうちょっと、ってちんたらしちゃう。
そんな間にもみんなどんどん僕の横をかすめて。

足が速いとか遅いとかじゃないよ。
走ることを選ぶか、選ばないか。
それだけなんだろう。
トラックから降りることも走ることも選べず僕は。

だけどね、ああなんて。
走ることを選んだ貴方も貴方も美しい。
僕だけが澱んでるけど周りの世界は皆輝いていて、
ああそれは、逆よりかどんなに素晴らしいことだろう。
僕がいつか、走ることを覚えてその列に加わっても。
どうしたって追いつけないで、
皆の輝きが羨ましくて、誇らしくて、届きたくて、
もどかしいまんまでそうやって死にたい。


ならばきっとこの世界は、
皆皆美しい横顔で僕を追い越していく世界は、
きっと理想郷。

『ラズベリイ・パイをどうぞ』(詩)


3/1,000


ラズベリイ・パイをどうぞ、ひとつ、
この僕にくださいな
口に含めば甘く甘く
心とろかすラズベリイ・パイ
だってきみのことが好きなんだ

ラズベリイ・パイはいつも幻想の中
ママのお得意、懐かしい味
どうして何も知らないなんて言えるの?
うわべだけ言葉を重ねても何一つ届かない
そんなことだっていっぱいあるのに

サクサク、ほろり、崩れる
はかなきパイの層のように
幾重にも連ねたココロの扉が、
一瞬にして開く、
そんなことだっていっぱいあるのさ


ですから、どうかどうかどうか

きみの、甘やかな、ラズベリイ・パイ
おひとつ僕にもくださいな
天使でも悪魔でも、憐れみでも気まぐれでも、
構わないよ
僕の情熱はオーヴン
きっかけは何でも君のその生地を
熱々に焼き上げるくらいの準備はあるんだ

『えたーなる』(詩)


2/1,000


たとえば、もし
私が死んだとして
焼かれて灰になって、
肉体も魂も酸素と窒素と二酸化炭素とか、
カルシウムとかに分かれて、分解してなくなってしまっても

貴方と私が過ごした記憶は、
あの時の時間の中に、ずっと残る

時間の流れというものは、
どこにも注ぐ海を持たない大河
或いは、流れ着いた大河を迎え入れて際限なく増殖し続ける海
どんどん流れ去ってすぐに目の前から消えてしまうけれど、
無くなったりはしない
いつまでもいつまでも流れて流れて流れて行く水

私たちの、
笑顔も、涙も、
屈辱も、喝采も、
嘘も、真も、
後悔も、希望も、全部
流れる瞬間の水に、浚われて
溶け込んでいる
時間の中にみんな入ってる


すなわち、
私は、
貴方は、
みんなは、
世界は、
くるくると回るちいさなみずぐるまのようなものだろうか
無邪気に、必死に、
物憂げに、軽やかに、
勢いよく、たどたどしく、
いい加減に、精密に、まわるまわるまわる、車

ほんのひとしずくの涙を、
そこに溶かす、
たったそれだけのために、
くるくると


そしてどんな些細なちっぽけなすべてを
ぜんぶぜんぶ
溶かして呑み込んで、流れる
時間という悠久
尽きることも絶えることもない永久

『バスタブを買いに』(詩)


1/1,000

パスタブを買いに、ちょっとそこまで。
あかるい宵だ。こころも踊る。

バスタブの買い置きが切れてるなんて。
どうして女房もうっかりしてる。
「なんとかひとつ、買ってきてくださいな」
コロッケなんぞ揚げながら。
「ないって言ったら、おじいちゃん怒るわ」
「安いのでいいのよ。今日だけだから」

ポケットの小銭。どんなのにしようか。
青いの。白いの。
深いの。浅いの。
たまには気分をすっかり変えて、丸いのなんてどうだろう。

つまらない話。よくある話。
だけどこうして思ってみるに、
バスタブてぇのも案外大事だ。
なければ風呂にも入れない。

バスタブを買いに、ちょっとそこまで。
毎日のこと。どってことないこと。
それでも今宵は明るい月夜。
なんだかこころが浮き浮き踊る。
ただいまあ、と玄関開ければ、
みんながコロッケと待っている。

『百代の過客』(詩)


2/1,000


突然、「老い」がうちに上がりこんでいたので、
私は憤慨して「勝手に入らないで下さい」と訴えた
そしたらまあ「何を言うのですか。いつも入れて下さるのに」
ときた。よくよく見れば、彼はいつも訪れる旅人と同じ顔だ。

「そうは言ってもねえ、物騒なご時世ですから」
私はさりげなく玄関の戸を開ける。
たしかにいつもの彼のようではあるけれど、
それでも間違いなく「老い」なのだ。
もしかしたらよく似た別人かもしれないし、
どっちにしても「老い」は困る。困るのだ。

「私はずいぶんここへは来たものですけれどねえ」
私の困った顔を見て、「老い」は悲しそうに言う。
彼はじっさい気のいい客で、
あれこれ一緒に過ごしたものだ。
言ってしまえば古い馴染みの、
友達なのだと言えるだろう。


ハロー。
ハロー。
代わり映えのしないような毎日!
私の肉体、私の時間。
それらはいつも朝起きると居て、
夜眠るまで一緒なのに、
何故か突然見たこともない「老い」という名の何かになる。
どうしてこうも世界は不自由だ。
何故にぎしぎし軋んで痛い。
衰え崩れて朽ちて行く。

何だろう何だろう。
昨日までは気のいい友達。

きっとそうではない。
偉い人たちは、そうは言うけれども。
ああ、今日も正座して、「老い」が私の家に居る。

ハロー。
ハロー。
どうしようもなく止められない下り坂。
それでも彼は、じっさいほんとに
気のいい馴染みの友達なのだ。

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