3/1,000 冷蔵庫のドアから大家さんの部屋へ戻ってきてからも、私は暫し呆然としていた。 世界が、まるきり違って見えた。 この、ドアノブも。 エアコンも。 掃除機も。 そこへ無造作にいっぱい掛かってるハンガー達も。 床に敷いてある絨毯、壁も天井もみんな。 ものというもの、 物質という物質、 ありとあらゆるところに、何か、「魂みたいなもの」が宿っているのかもしれない、と思ったら、その息苦しさに押しつぶさ...全文を読む
そのドアの前、僕はずっと待っている。いつか時が満ち、すべての事柄が正しくあるべき姿に収まり、ドアが音を立てて開くのを。そのドアの中、君はずっと待っている。いつか来たるべき時、ついに来訪者が現れて、ドアをノックするのを。約束された扉を隔てて、いつまでも、待っている。...全文を読む
刻み付けられたのは、刻印。楔が打ち込まれて、深い深い、痕を残す。消そうとしても消えやしない、自らの意志の及ばぬところ。それは、瞼の裏の残像。思い出の色が褪せても。記憶は薄れて消えてしまっても。魂の奥に刻まれた、一瞬のまばゆさの残像は、未来永劫そこに在る。闇の中でも目を閉じれば、淡く微かにそれは光って僅かに私の勇気を照らす。その美しさを、その喜びを、いつか私が忘れてしまっても、瞼の裏の残像だけは、未...全文を読む
何度でも、繰り返し、繰り返し、私はあなたの名を呼ぶ。「あなたという存在」を指し示すことのはの連なりを口にすることが、心が嬉しいんだ。何度でも、繰り返し声に出す度に私の中に雪のようにあなたの名前が降りつもってゆく。それは、ゆっくりと溶けて私のすみずみまで沁みわたりどこか深いところに集まって感情の泉となって湧いて出てくる。何度でも、繰り返し、私にあなたの名を呼ばせる、その泉の名を憧憬、という。...全文を読む
王の椅子。玉座と呼ばれるそれに、座ってさえいれば、僕は、いつだって王様でいられる。この、半径50センチ以内の、僕しかいない王国で。だってここを出たら、外には色々な王がいて、だからぶつかりあったり、貶めあったり、傷つけあったり、争ったり、しなくちゃいけない。そんなのはごめんなんだ。僕は平和でいたいんだ。そんな言い訳をしながら。本当は、王様でなくなるのが、怖いだけなのに。この王の椅子は、やわらかく、ぬる...全文を読む
3/1,000彼女は泣くのが好きではないので、悲しい時も涙は流さず、いつもの窓のところに立って、少しの風に髪を揺らしてなにもないまちを見つめている。流れるのは、悲しくもなければ、陽気でもない、ミドルテンポの歌謡曲。安っぽくて手軽な歌詞に、内に仕舞った涙を託して、どこにも届かない鼻歌をうたう。気持ちは。どこか、この、胸の、内側の方。こころの、真ん中のあたりから、湧いて、流れて、身体の中を巡る、この、気持ち...全文を読む
叶わない夢を見るのと、届かぬ距離を嘆くのと、どっちみち、どちらかしかないのなら、バラ色の、未来など来ないなら、現実なんて無視して、愚かしく、空の上で生きよう。憧れなんておめでたいかい?ハッピーエンドは退屈かい?別にイイんだ、夢が夢でも、夢見た果てに、何もなくても。僕が欲しいのは素敵な将来なんかじゃなくて、役に立たない宝の地図さ。いつまでもずっと回り道しよう。人生なんて放っといて。無駄な望みを抱いて...全文を読む
自分は、どこへ行きたいのだろう。 そんなふうに、分からなくなることがある。 毎日の、些細な雑務や、解決すべき問題の色々、そして時折の戦争。 それらには、答えがあって、終わりがある。どんな困難な命題であれ、そういった類いの事柄に、ユルクが苦痛を感じるということは、まずない。自ら恃むその頭脳の明晰は、およそあらゆる混沌を整理し、可能性をすみずみまで探り、それを選び取るという作業をするにあたって、支障...全文を読む
13/1,000「もう今週三回目だね。あたしたちラブラブだね」 部屋に入るなりしなだれかかってくる百恵に半端な笑顔で返しながら、私はネクタイを緩める。 行きつけのラブホなどは作らない。足がつくし退屈だ。幸い池袋なんていう街は人もホテルもごちゃごちゃ多くて我々のような人種のためにあるようなところだから困ることはない。 いつもだらしなく半開きの百恵の唇を、強引かつ執拗に貪ると、頭の後ろでくすぶっていたイライラ...全文を読む
12/1,000あめつちの、はるかなる、その、間。遠い道のりを落ちてくる、長い長い一瞬に、空気の中に尾を引いて、雨の雫は夢を見る。落ちてくる間のスピードで、微細な飛沫を撒き散らし、わが身をゆるゆる細らせて、大気をしっとり湿らせながら、雨の雫は夢を見る。とうとう大地に接吻して、砕けて散って、しみこんで花や草木の根をとおり、吸い上げられて、湯気になり、あめつちの、はるかなる、その、間。遠い道のりを戻ってゆく、...全文を読む
11/1,000光る翅を伸ばして、どこまでもゆけ!僕らの明日は、思っているよりは明るくはないようだから、風にまかせて、ゆけるだけゆけ!どうにもならない厄介ごとから、全速力で逃げてゆけ!唸る翅をふるわして、彼方までゆけ!僕らの今日は、思っているよりは長くはないようだから、夕日めざして、ゆけるだけゆけ!どうにもならない望みを果てまで、超特急で追ってゆけ!悲しみは、いくらでも、沢山。喜びも、いくらでも、沢山。お...全文を読む
10/1,000腕を伸ばして。貴方の首筋に絡みつくようにしがみつけば、目の前にあるのは無防備な喉仏。仄かに汗の香りがする。喋るときに低く震えて唸る。髭がまばらに散っている。太い筋が鎖骨まで延びてる。 そんな貴方の首筋に鼻をうずめて私は、どうやってこの今の甘美な鼓動の高鳴りを永遠に留めて置けるかと考える。目の前で、貴方が笑うたびに小刻みに上下する、この、林檎のカケラを食い千切ってしまえば。私の罪と貴方の罰が...全文を読む
9/1,000キミの手に、手を重ね合わせて。そうしたら、どんな小さな、取るに足りない過ちすらもひとつ残らず、償える気がして。キミの頬に、頬をそっと寄せて。そうしたら、どんな昔の、色褪せてしまった記憶さえも、ひとつ残らず、分け合える気がして。僕らの旅は、長い長い遊覧船。遠い遠い飛行船。帰ってくるよ、いつか必ず。だけどその前に、キミとどこまでも行かなくちゃ。キミの影に、僕の影を溶け合わせて。...全文を読む
ありがとうございます!
旦那さんはもうべろんべろんだと思います(笑)
メイド喫茶できっと飲みすぎたんだろう(笑)
故に、折角コスプレしてもらってもmasayon『嗜好』 (みじかいおはなし)No title*せいちゃん
ありがとうございます!
旦那さんは阿呆だと思います(笑)
多分時々酔って訳のわからないものを
おうちに持ち込んだりするんだと思います(笑)
かなりmasayon『嗜好』 (みじかいおはなし)No title旦那さんかわいすぎるww
かなりこの日は深酒してますねwchami『嗜好』 (みじかいおはなし)No title面白かった~♪
旦那さまがアホで(褒めてる)可愛いわ。
奥さんもなんだかんだ優しいしね。
幸せな家庭だわ。せい『擬態・13』 (小説・中編)No title*せいちゃん
ありがとうございますー☆
いや。内情をばらしてしまうと、
一気に終わらす根気が無いので
(ある程度長さ書かないとキリが良くならないから…)
ちびちびmasayon『擬態・13』 (小説・中編)No titleお、またまた気になる終わり方~!
何が問題だったんだろうか・・・。
なんか異世界のお話と、現実的なところとが混じっていて面白いよね!
私、好きだわー。このお話せい『擬態・12』 (小説・中編)No title*せいちゃん
ありがとうございます☆
騙されてもいいそうです(笑)
多分、この人も結構馬鹿なんだと思います(笑)
王子様は天然なのかと思ったらそうでもないみたいmasayon『擬態・12』 (小説・中編)No titleいいのかい、騙されても・・・、とついつい(笑)
王子~!この後どうなるのかな。
にこやかにたたみかけるように話すのが・・・。
何かありそうな気がして仕方ない(笑せい『擬態・11』 (小説・中編)No title*せいちゃん
コメントありがとうございます!!!
見てみたら前回の更新から一ヶ月以上空いてた(笑)
中の人に申し訳なかった(汗)
まあ例によってここからラストまmasayon『擬態・11』 (小説・中編)No title泣きたくなる気持ち、わかる気がする。
そして、王子、優しいなあ。
苦笑いの理由はなんだろう。
気になる!せい