『千段』

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みじかいおはなし
幸福の壺の主(旧作)[完結]


『幸福の壺の主・1』(みじかいおはなし・旧作)

2008.11.16  *Edit 

 瑞希、あんたに、ちょっと内緒で話があるのよ。
 そう、祖母に呼び出されたのは、祖父の四十九日が終わってまもなくのことだった。一人暮らしのアパートから、実家までは電車で三時間半。これから、来られない? と尋かれたのは学校もバイトも休みの土曜だったから、ふたつ返事で応じる。なんとなく、形見分けとか、そういう類の話のような気がした。少しかしこまった気分で、私は祖母の部屋のふすまを開けた。

「あんたってさあ、カエル、好きでしょう?」
 部屋に入るか入らないかのうちに、いきなりそんな言葉が来たので、私はあやうく、コントみたいに「ガクッ」と前にのめるところだった。おばあちゃん。
「――いや、まあ、好きっていうか、嫌いではないですけども」
 なんとか心理的な体勢を立て直そうとしながら、私は祖母の横にある水槽に目を遣る。そこには大きいウシガエル様が鎮座ましましている。名前は徳治郎。祖母が飼っているものだ。
「あんたのお父さんもお母さんも、カエル好きじゃないでしょう。だからねえ、あんたに、と思って」
 と、祖母は、その徳治郎さんの水槽の方へあごをしゃくって見せた。
「……私にくれるってこと?」
 まだ頭の整理が十分に出来ないままに、立て続けに予想外の台詞が繰り出されるもので、私はすっかりと混乱しながら祖母を見た。いつもそうだが、祖母は話の順序が意味不明なのだ。だからと言って系統立てた説明を求めても無駄なので、理解するためには彼女のペースに付き合って黙って聞いているしかない。

「そう。あのねえ、このねえ、徳治郎さん、これ、最初は、おじいちゃんのだったのよ。ほら、おじいちゃん、骨董とか好きだったでしょう」
 そら、まただ。何故そこで骨董のハナシになる……? と思いながらも、我慢して頷く。万事この調子なのだ。

 祖父は確かに、骨董が好きだった。テレビの鑑定番組なんかをいつも嬉しそうに眺めていたものだ。うちは取り立てて裕福という訳ではない、ごく一般的な中流家庭だったから、勿論そうそうお宝なんぞあるわけもない。なんとなーくそれらしーい古い花器とか、壺とか、茶碗とかがちまちまある程度だ。そうは言ってもやっぱりそれなりのお値段のものたちらしく、おじいちゃんはよく「お父さんやお母さんには内緒でな」と言って私にこっそりと買ったものを見せてくれたりしたものだった。父や母に知れると、無駄遣いだと文句を言われるからだろう。孫の私は、祖父が無駄金を使おうが、偽物をつかまされて散財しようが、別にどうってことない、自分のお財布の中からやりくりするんならいいじゃない、と思っていたので、祖父も気楽だったらしい。やれ古伊万里だ、誰々の作だって言われたって全然私には意味不明なのだけれど、にこにこ聞いてるだけで祖父は喜んだし、祖父と仲の良い私は祖母のお気に入りでもあった。じじばば受けの良い体質なのだ。
 だからこそ、内緒で、と呼び出されることにも違和感がなかった。よくあることだったからだ。ただ、深刻な話ではないかもしれないけど、大事な話ではありそうだった。





2に続く。



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ミクシィでご一緒してる方は「…あれ?」と思われたかもしれませんね。
そうです、多数決小説(←あ、そういやこれも完結してない…汗)にも
「幸福の壺」というモノが出て来ました。
アレは、この小説を書いた直後に書いたのでした(笑)
しかし、ふたつのおはなしの間にはまったく関連性はありません(爆)

『ジョージョーと鳥』に比べると最近の作品なので
(アレ下手すると10年くらい前だな…)
自分でも比較的心穏やかに読めます(笑)



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