『千段』

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みじかいおはなし
幸福の壺の主(旧作)[完結]


『幸福の壺の主・3』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.17  *Edit 


 それは、『幸福の壺』なのだと、骨董屋は祖父に言った。
 祖父がまだ三十代の頃、戦後まもなくのことである。皆が皆、取り敢えず食べていくことに一生懸命だったような時代に、そんないんちき臭いものを買ったのは、きっと、その時祖父が、藁にもすがるような気持ちだったからかも知れない、と祖母は言った。
 祖父は、私の祖母とは再婚だった。前の妻という人は、祖父が戦争に行っているあいだに、舅や姑との折り合いが悪かったのか逃げ出して実家に帰ってしまい、祖父の父母は、戦時中というただでも大変な、しかも男手のない時に、嫁もなくて随分と苦労をしたのだそうだ。両親に辛い思いをさせたことへの負い目もあり、次の結婚は失敗できない、と思うものの、自身も若干女性不信気味になってもいて、さて、こんなことで果たして嫁なんぞ貰えるのかと鬱々としていた――そんなタイミングで、祖父は『幸福の壺』と出会ったのだった。

 なにしろ、勧めるに事欠いて、『幸福の壺』だ。
 胡散臭い、と、勿論、祖父も思わなくはなかった。しかし、騙されたと思って買ってみても諦めがつくらいの手頃な値段であったし、なにより、骨董品屋が蓋を開けて中を見せてくれた時に、中からくるりと丸い目を覗かせたウシガエルが祖父の心を捕らえた。
「これが、この壺のヌシ様なのです。このカエル様が、あなたの願いを叶えてくれますよ」
 そのウシガエル様の、グウとかモウとかいう感じの鳴き声を聞いた瞬間に、祖父は、その壺を、なんとしても家に持ち帰りたい衝動にかられたのだそうだ。
 そうして、壺と、徳治郎さんは、我が家にやってきたという訳なのだった。

 壺が――というか、徳治郎さんが、叶えてくれる望みは、ひとりにつき、ひとつだけだ。望みが叶ったら、壺ごと、徳治郎さんを、誰かに譲り渡さなくてはいけない。

「おじいちゃんは、『両親をちゃんと世話してくれる、いいお嫁さんを貰えますように』って願ったんだって。だから、おばあちゃんが、その、いいお嫁さんって訳よね。まあ、いいか悪いか分かんないけども、おじいちゃんは、いいと思ってくれたんでしょ、結婚して程なく、おばあちゃんにこれを譲ってくれたの」



4に続く。



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