『千段』

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みじかいおはなし
幸福の壺の主(旧作)[完結]


『幸福の壺の主・4』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.19  *Edit 



 もう、60年ちかくも前になる、その当時を思い出してか、祖母は目を細める。
「あんたも今、びっくりしてると思うけど、それどころじゃないわよ、私なんて、お嫁に来たばっかりで右も左も分かんないのに、いきなりこんなもの貰ってもねえ。びっくりしたどころじゃないよ。でも、結婚したばっかりの旦那に逆らうなんてこと、おばあちゃんの時代は考えられなかったからね、ありがたく頂いたわよ」
 私は曖昧に笑って頷いた。私自身が、まず、今、この事態をよく飲み込めていないというのに、そう同意を求められたって困るのだ。
「まあ、しょうがない、徳治郎さんの世話はしたけれどもね。幸福の壺って言われても、あんまりねえ、ぴんと来ないでしょ。だから、ずっとそのままにしてたんだけどもね。おじいちゃんもそうだけども、人間、誰しも、藁にもすがりたい気持ちになる時があるのね。あんたがまだうんと小さい頃だけども、おばあちゃんねえ、凄く大きい病気したことがあるんだよ」
 それは、なんとなく覚えていた。家族全員が、なんだか、暗い雰囲気になって、ちびの私も何度かお見舞いに行った。子供心にも、ただならぬ事態であろうことは伝わってきたのだから、相当悪かったのだろう。
「生きるか死ぬかってなった時には、もう、なんでもいいから頼りたくなるもんだわね。私はね、どうしても、おじいちゃんより先には死ぬ訳にはいかないって思ったの。それで、徳治郎さんにお願いしてみたらねえ、そのおかげかどうかは分からないけども、ほら、こうして、元気になって、おじいちゃんをちゃんと送ることが出来たでしょ」

 本当に徳治郎さんが『願いを叶えてくれた』のかどうかは分からない。けれど、結果としては、おじいちゃんの願いもおばあちゃんの願いも叶ってはいるのだから、見方によってはこれは打率十割なのだ。
「おばあちゃんだって、今でも、半信半疑だよ。でも、なによりも、徳治郎さんは、今までずっと生きてるんだよ。60年以上も。カエルの寿命なんて知らないけども、そんなに長生きするはずはないものねえ。だから、なにか、やっぱり特別なカエルであることは、間違いないよ。それでなくても、おじいちゃんとおばあちゃんにとっては、大事な、家族みたいなものだもの。大切にして、いたわってあげてちょうだい」
 なんと。私の人生の三倍以上も、このウシガエル様は祖父母と生活をともにしてきたというのだ。改めて考えたら、それだけでも凄いことだ。なんだか御利益がありそうな気がしてきた。
「はい、大事にします」

 こうして、幸福の壺とその主は私の一人暮らしのアパートにやってきたのだった。



5につづく。



*

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実際ウシガエルの寿命がどのくらいかって今ちらっと検索してみたんですが、
日本固有種で7~10年とか、アメリカウシガエルで20年くらい生きる個体もいるとか、
そういう記載が見受けられました。
それなりには長生きもするカエルみたいです。
それにしても60年はないと思いますが(笑)



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