『千段』

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みじかいおはなし
幸福の壺の主(旧作)[完結]


『幸福の壺の主・5』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.19  *Edit 

 祖母が、ついでに、と言って、今まで使っていた水槽もそのままくれたことだし(重かった)、いつまでも壺の中ってのも、本人はどうだか知らないがこちらとしてはなんだか気が引けるので、取り敢えず今までとおんなじような環境にしておくことにしようと思った。水槽の中のちいさなプールに水を張り、徳治郎さんをそこへ移す。水槽の上で壺を傾けると、彼はいささか大儀そうにグウとかモウとかいう感じの鳴き声を立て、それでものそりのそりとはい出して、水槽の隅に収まった。
 でっかい。ウシガエルの標準は知らないけど、かなり大きい方なのではないだろうか。両手のひらの上に載せても、たぶん、収まりきらないではみ出してしまう。恐らく、大きすぎて跳べないのではないか。少なくとも、私は、散歩に連れて行って、彼がアマガエルなんかみたいに、ぴょこたん、と跳ぶのを見たことがない。のそ、のそ、と歩く。ちょっとかわいい。この徳治郎さんが、父や母よりも長生きしていて、そして、願いを叶えてくれるなんて、なんのどっきりなんだろう。人生って時々意味不明な凄いことが待っている。
 私は、祖母の言葉を、頭の中で反芻してみた。

 願いは、ひとつだけ。
 紙に書いて、徳治郎さんに食べさせる(!)
 叶ったら、壺ごと、誰かに譲り渡す。
 プールの水が濁ってきたら替える。
 エサは魚肉ソーセージでよし。時々チータラをあげると喜ぶ。
 プロ野球中継が好き。

 本当かよ、という感じであるが、確かに、ためしに買ってみたチータラへの食いつきは抜群だったし、プロ野球中継をつけるとテレビに注目している様子もあった。バラエティもそれなりに見てる感じではあったけれど。なんだかますます信憑性が出て来た。

 こうなると、途端、欲が出て来て、あわよくば、なんて色々な妄想が浮かんでしまう。願いが叶う、幸福の壺。なんて蠱惑的な響きだろう。そんなふうに思ってしまう自分が、俗っぽい小人物に思えてへこむ気持ちやら、そもそもこんなこと真に受けつつある自分がまず馬鹿馬鹿しいと思う気持ちやらで、頭の中はぐるぐるしてくる。
 そりゃあ、ね。
 壺を貰った当時は、おばあちゃんも若かったかもしれない。
 でも、たぶん、想像するに、当時の20歳と今の20歳じゃ、オトナ度、成熟度がきっと全然違う。だから、その当時に、おばあちゃんがくだらない願い事をせずにただ黙って徳治郎さんの世話をしていたことと、今、私がこうしてぐるぐるしてることを比べてもきっとしょうがない。いいんだ、私の度量がちっちゃいのなんて、もともと分かっていたことだし。
 でも、なんだか、この状況。
 なにか、神様みたいなものに試されているような気持ち。
 金の斧銀の斧じゃないけど。
 目の前に、わざと、誘惑のタネをぶら下げられて、試されているような。

 願いは、ある。もちろん。
 くだらないのから深刻なのまで、大小とりまぜ色々だ。
 一番のお願いごとは、実はすっごくはっきりしていて、初詣でとか行くと、ここ数年は必ずなにより一番にそれをお願いするくらい分かり切ってるのだけれど、モンダイは、それを、徳治郎さんにお願いしてしまっていいものかどうか、ということだった。徳治郎さんの、つぶらな、でっぱった目玉を見ていると、色んな邪心を見透かされてる気分になってしまって、余計深みに嵌るのだ。


 あまりに悶々としてきたので、バイトが一緒で仲良しの万里に電話をしてみた。



6に続く。





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