『千段』

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みじかいおはなし
幸福の壺の主(旧作)[完結]


『幸福の壺の主・8』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.22  *Edit 



「いいじゃん、面白いじゃん、徳治郎さん。今度、バイト連れてきてよ」
「え!? だって、カエルだよ!? レストランにカエルは駄目でしょ!?」
「じゃあさ、その、壺に入れたらいいんじゃない? 自分で入っていくんでしょ? そしたら、きっと、大人しくしてるんじゃないかな。賢そうだしさ」
「うーん……どうだろう」
「まあ、それか、近いうち、見に行くわ。瑞希明日シフト入ってるよね?」
「あ、あたしねえ、明日はエッちゃんと代わってもらったんだよね。だって、試写会だもん! オーリー来るもん!」
「あそうだ、ごめん、そうでした。わかったー、じゃあ、あさってはあたし休みだし、火曜日、バイトのあと瑞希んち泊まり行っていい? それ、徳治郎さん、本当見たい。あたしカエル好きだし」
「いいよいいよ、おいでよ。カエル好きには堪らないよ、多分」
「じゃあね、ちゃんと、お願いしとくんだよ、『オーリーとデート』」
 万里が笑いながら電話を切ったあと、私はしばらく自らの煩悩と戦う羽目になった。本当に、恋人でもなくて、結婚でもなくて、デートでいいのか!? デートしたって、だから何って訳でもないし、次があるかもわかんないし、っていうか「デート」なんて漠然としたお願いして、手も握らない健全デートだったら凄いがっかりするかもしれないし、もっと具体的に「キスしたい」とかの方がいいのかな、とか。万里には「デートで十分」とか言っておきながら、本当はもっと欲張りなのだ、私と来たら。でも、こんな調子じゃあいつまで経っても決まるはずがない。マリリンの言葉を、神のお告げだと思おう、と、私は決めた。

「オーリーとデート」これでいこう。手も握らない健全デートかもしれないし、最後までフルコースの大人のデートかもしれないし、ほんの数十分の短いデートかもしれないし、朝から夜までたっぷりのデートかもしれない。でも、何にしたって、私が、普通に、いち日本の大学生としての人生を生きてたら、どんなデートであれ、ありえないことは間違いない。なら、それは、奇跡みたいなものだ。徳治郎さんに、十分、お願いする価値のあることだ。

 私は、徳治郎さんを見た。
 徳治郎さんは、私の視線を受け止めて、グウとかモウとか鳴いた。ああ、見透かされてる、と、何故か、思う。そして私は深々と頭を下げて、
「宜しくお願いします」
 と言った。客観的に見たら滑稽な図だろう。普通、人は、ペットのカエルに頭は下げない。でも、いいのだ。私の、こんな、馬鹿馬鹿しいけど熱烈な恋心を叶えてくれるというのなら、頭も下がるというものだ。
 顔を上げると、徳治郎さんはちょっと笑っているように見えた。いや、違う。笑っているように見えるのは、彼が口を開けているからだった。にっこり、ビッグスマイル風に開けられた徳治郎さんの口を見て、私はぽんと膝を叩く。そうだ、お願いしただけじゃ駄目なんだった。紙に書いて食べさせるんだ。






9に続く。




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