『千段』

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みじかいおはなし
ぼくたちの地図(旧作)[完結]


『ぼくたちの地図・2』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.25  *Edit 



 道中三匹は皆、言葉少なだった。何しろ、毎日の飛脚の仕事で鍛えた足腰であるから、黙々と歩けば進みは呆れるほどに速い。日没までに町を二つ通過した。

 長兄の宇吉は、日が暮れても尚旅路を急ごうとした。それを止めたのは末の三々助だった。
「どのみち、おいらたちは、うんと遠くへ行かなくちゃいけないんだよ、大兄ちゃん」
 厭味なく言われたであろう末弟の言葉に、佐宜次が腹でも痛いような顔になる。三々助は中の兄をちらりと見て表情を曇らせたが、更に言い募った。
「この町にはただ一晩泊まるだけじゃないか。もし噂になったとしても、明日にはおいらたちは他所へ行っちゃうんだ、関係ないよ。それより、長旅のためには身体を休めなくちゃ」
 結局兄弟は三つ目の町の旅籠に一夜の宿を取った。

 眠れぬ布団の中で、宇吉は一人思いを巡らす。飛脚の仕事は、自分にとっては天職だ、と思える。
 宇佐三屋で扱うのは殆どが文だった。奉公先の息子から里の両親への文。片思いを切々と綴った恋文。色々な思いを託して、人々は宇吉に文を渡す。その信頼を、期待を背負って、彼らの思いを懐に抱いて走る、その誇り高い時間! そして、目指す相手へ首尾よく届けたときの、深い満足感! それを、手放すなんて、自分には到底耐えがたい。

 口を開けば佐宜次を責めてしまいそうで、だから宇吉は黙っている。本当は、亀との勝負に乗ってしまった佐宜次の気持ちも少しは分かる気がした。自信と、傲慢というのは、常に紙一重だ。宇吉自身だって、自負心が強い分、自惚れの方へ傾きかけることも実際にあるのだ。増してや、佐宜次は兄弟の中でも一番に足が速いのだから、多少天狗になったとて無理のないことだ。

 だが、理解が出来るからと言って、腹の虫が収まるわけではない。佐宜次の自惚れの代償はあまりに大きい。おっかさんの形見とも言える店をたった一代で潰し、一家を離散させ、日々の糧を奪い、住み慣れた土地をも奪ってしまった。

 自分がそんな立場だったら、どんな気持ちになるか、宇吉には想像もつかない。罪の意識に耐えられるとは到底思えない。だから、石のように頑なに黙りこくったままの佐宜次が何を考え、何を思うのか、全く理解が出来なくて、思い悩んでいるのが自分ひとりのような気がして、目の前が真っ暗になるような思いがするのだった。

 明け方に、少しまどろんで、目を覚ますと佐宜次はいなくなっていた。



3に続く。






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物凄く手前味噌で恐縮なのですが、
ウサギ三兄弟の名前が自分でとても気に入っています。
宇吉・佐宜次・三々助(笑)
完全に駄洒落というか、語呂合わせなんですが(笑)



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