『千段』

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




お気に召して頂けましたらクリックお願い致します!
web拍手ボタン ランキングバナー

*Edit CO(-) 

みじかいおはなし
ぼくたちの地図(旧作)[完結]


『ぼくたちの地図・3』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.26  *Edit 



 もぬけのからになった布団を見て、宇吉が最初に思ったことは『ああ、やっぱりそうか』であった。ほどなく起き出して来た三々助も、さほど驚いた表情は見せなかった。

「俺は、正直少しほっとしてるんだ」
 三々助の顔を見ないままで、宇吉は思わずそう漏らしていた。
「うん、おいらもだ」
 三々助はそういいながらも涙声になって、しゅん、と鼻をすすり上げた。無理もない。物心ついたときから、いつも三匹一組、ついぞ離れたことのない兄弟だったのだ。それが、これを限りに今生の別れとなるのかもしれないと思うと、宇吉の胸中にも勿論去来するものはあった。

 一層無口になりながら、残った二匹は先を急いだ。兄弟の足であれば、半月足らずで国ざかいまで辿り着ける。取り敢えず、宇吉は隣国へ行くつもりであった。駅伝方式で遠くの国まで荷を運ぶ継ぎ飛脚などであれば兎も角、宇佐三屋のような町飛脚の評判が隣国へと届く筈もなく、つまり二匹の素性が割れて噂になる心配はまずなかったからだ。

 旅程は順調であった。幸い天気にも恵まれて、予定通り三日目には山をひとつ越えた。が、ここへ来て、路銀が底をついてきた。日銭を稼ぐために、二匹は見世物をやることにした。三々助は踊りが上手だったし、宇吉は笛が多少出来る。人通りの多い辻で鐘を叩いて客寄せをすれば、それなりに宿代の足しにはなった。

「お前は、本当に踊りが上手だよ」
 宇吉はつくづくと弟を眺めた。玄人はだし、とはこういうことを言うのだろうか。耳にハチマキをして、ソ、ソラ、ソラ、ソラの掛け声で踊る三々助には、見慣れた宇吉ですら思わず見入ってしまうような、なんとも言いがたい魅力があった。ふさふさ丸い尻尾が揺れるのも、つぶらな瞳がくるくると動くのも、きれいに揃った前歯も愛らしく、確かに美兎ではあったが、そういう外見的なことだけではなかった。

「うん、おいら、踊るのが好きだ」
 三々助は投げ銭で一杯になった笊を抱えながらにっこりと笑った。
「なんだか、黙って歩いてると色んなこと考えちゃうだろう? 気分が滅入るだろう? でも、踊って、踊って、うんとくたびれると、なんだか何にも考えないで無心になれるときがあるんだよ。こうやって、投げ銭なんか貰うと、ああ、嬉しいって思うんだよ。なあ、大兄ちゃん、おいら、お金を貰うのがこんなに嬉しいなんて思ったの初めてだ」


4に続く。




お気に召して頂けましたらクリックお願い致します!
web拍手ボタン ランキングバナー

*Edit CO(0) Tag List  [ 自作小説 ] 

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。