『千段』

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みじかいおはなし
ぼくたちの地図(旧作)[完結]


『ぼくたちの地図・4』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.27  *Edit 



 宇吉は、何と答えていいのか分からなくて、暫く黙った。そうして、ようよう言葉を唇の間から引きずり出すようにして
「それぁ、良かったな」
 とだけ言った。

 三々助は、芸事に向いている。それは、明らかだった。
 飛脚としても、三々助はなかなかいい仕事をしていたし、愛想がいいからお客にも好かれた。決して、飛脚に向いていないというのではなかった。けれど宇吉は、今まで飛脚の仕事をしている最中に、こんなに生き生きとした三々助を見たことが無かった。

 何よりも『金銭を貰うことの歓び』を一番強く感じるのが、宇吉にとっては飛脚の仕事であったから、三々助がそれを踊りで感じるのなら、それが、三々助にとって一番やりがいのあることなのだろう。


 その事実は、宇吉にとっては受け入れ難いことでもあった。何故なら、宇吉の夢は、いつかほとぼりが冷めたら、生まれた町に戻って、兄弟三匹で宇佐三屋をもう一度始めることだったからだ。 まだあんなことになる前、兄弟は時に将来の話をした。宇吉がおとっつぁんの店を継いで、佐宜次が西の隣町、三々助が東の隣町に二号店、三号店を構える。それぞれがまた三匹息子を持って、ひとつが三つ、三つが九つ、と店を増やして行こう、そうしたら孫の代には国一番の飛脚屋になるぜ、と、冗談混じりに、でも本気でそうなればいいと願いながら。佐宜次が行方知れずになってしまった以上、もうその夢が実現する可能性は殆どないのだけれど、それでも、三々助と二人でいつか国に戻るのだと、宇吉はそう思っていた。


 けれど。今、三々助にとって、飛脚の仕事よりも向いているものが見つかってしまった。宇吉は、弟に尋ねた。
「三々助、お前、踊り手で食っていきたいと思ってるのか?」
「でも、おいら、もう一度兄ちゃんたちと宇佐三屋をやりたいんだ。おいら、兄ちゃんたちと一緒に居たいんだ」
 と、 三々助は泣きそうな顔をして言った。

「お前なあ。今訊いてるのはそういうことじゃない。飛脚の仕事と、踊りと、どっちか一方しか選べないんなら、どっちをやりたいかって話だ」
 本当は、一番こんなことを訊きたくないのは宇吉だった。三々助はそれを知ってか知らずか目にいっぱい涙を溜めて、それでも
「おいら、踊る方が、好きだ」
 と答えた。覚悟していたとはいえ、その返答は宇吉には酷く辛かったが、
「なら、これからはもっと踊りの精進をしろよ」
 とだけ言って、弟に背を向けて洟をチンとかんだ。


5に続く。





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