『千段』

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みじかいおはなし
ぼくたちの地図(旧作)[完結]


『ぼくたちの地図・5』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.11.28  *Edit 

 


 その夜、宇吉はどうしても寝付かれずに、旅籠の部屋をそっと抜け出して、夜道をそぞろ歩いた。月の明るい、いい晩だった。
「皆、行っちまうんだな」
 独り言を言うと、ほろりと涙が出た。佐宜次は行方知れずになり、三々助は他の道を見つけて、気がつけば宇吉はひとりぽっちになってしまった。
 三々助のように、何か他にやりたいことを見つけるなんて、宇吉には出来そうにない。踊る三々助はあんなにも生き生きしているのに、いつまでも叶うか叶わないか分からない夢に頑固にしがみついている自分が酷く滑稽に思えて、それが余計に悲しくて、宇吉はひとけの無いのを幸いに歩きながらほろほろと泣いた。

「まあ、そう、泣きなさんな」
 唐突に闇からそう声がして、宇吉は飛び上がらんばかりに驚いた。
「誰だ?」
 よく見ると板塀の前の草むらがざわざわと揺れている。
「ここだよ、ここ、ここ。あんたの足元のたんぽぽだよ」
 宇吉のすぐ下でまた声がして、見るとたんぽぽの花が風もないのにしきりに揺れていた。
「……俺ぁ、たんぽぽと話したのは生まれてこの方初めてだ」
「そうだろう。あたしたちはめったに他の生き物に話し掛けないからね」
 たんぽぽはくすくす笑うらしかった。
「何があったか知らないが、そうお泣きなさんな。あたしの花でもお食べ。元気が出るよ」
「えっ、だって」
 宇吉は狼狽して言った。
「俺があんたを食ったら、あんたは無くなっちまう」
 たんぽぽはますます笑って、
「あんた、馬鹿だねえ。あんたが食べなくたって、あたしはそのうち枯れちまうんだよ」
 と、何故か誇らしげに言った。まるで、花が胸を張っているかのように、宇吉には見えた。夜露に閉じた花びらが、開き始めるかと錯覚するくらいに。
「このままここで、種を飛ばして枯れちまうか、あんたに食べられるか、決めるのはあたしなんだよ、あたしの人生なんだからね。ここに子孫を残すのも乙だと思ってたけど、あんた見てたら気が変わった。お食べ。あんたに食べられることにするよ」



6に続く。





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