『千段』

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みじかいおはなし
いつかのメリーゴーラウンド(旧作)[完結]


『いつかのメリーゴーラウンド・3』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.12.02  *Edit 



 敏子は鼻から溜め息を漏らしてしまった。若い人はこれだから困る。
「岡本くん、気持ちは分かるけどさ」
「はい」
 岡本は、彩乃を抱き直しながら返事をする。
「普通に考えてみてよ。そんなことできると思う?」
 学生は何でも簡単に考えて駄目だわ、と敏子は思う。常識という奴が分かっていない。電源入れれば動くんだから動かして下さい、というのはあまりに安易というものだ。

 だが、岡本の返答は、敏子の意表を突いていた。
「思わないですよ」
「はァ!?」
 声が裏返る。突然大声を出した敏子に驚いたのか、彩乃が
「パパぁー」
と、ぐずりはじめてしまった。
「はいはいはい、大丈夫だからなー」
 器用に身体を揺らして彩乃をあやしながら、岡本は顔だけ敏子の方へ向けて言葉を継ぐ。
「僕も、普通に考えたら無理ってことぐらい分かります。そこまで馬鹿じゃないです。でも、敏子さんだったら、もしかしたら、俺の気持ち分かってもらえるかもしれないと思って。あの、新人バイト研修で敏子さんに言われたこと、凄い感動したから」
 一人称『僕』と『俺』が混じってしまっている。そんな、どうでもいいことに気付いて敏子は可笑しくなる。

 目線を岡本の斜め後ろに飛ばすと、壁に貼ってある社訓が目に入った。
 その第一条。『遊園地とは、皆様に夢を提供する場所です』
 敏子は新人の研修の時にいつもその第一条を引き合いに出して、決まった話をするのだ。

 ――私は、そうは思いません。
 そう、敏子はまず断言するのだった。毎回殆ど同じ文句だ。
 ――夢、なんていうあいまいなものじゃなくて、遊園地は、楽しい現実を提供する場だと、そう、私は思います。夢なんていうのは、所詮、人の心の中にしかありません。触れないし、不確かで頼りない感じがしますよね? 
 でも、ここは現実です。お客様は、ただ、楽しみたい、っていう気持ちだけで、時間とお金を費やしてここに来てくださるの。そして、私たちは、ただ、お客様に楽しんでいただきたい、っていう気持ちだけで、誠心誠意サーヴィスを提供するの。これって、凄く贅沢なことだと思いませんか? 
 誰でもが、いくらかのお金を払って園の中に入ったら、遊具や、ショーで、現実に、楽しんでもらえるんです。こういう贅沢な場所がある現実って、とても素敵だな、と私は思います。皆さん、この、遊園地という贅沢な場所で働くことに、どうか誇りを持ってください。


4に続く。





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