『千段』

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みじかいおはなし
星喰い(旧作)[完結]


『星喰い・2』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.12.10  *Edit 



 私は信じがたく老人の顔を見つめたが、彼は相変わらず淡々とした表情のまま、わかりきったことのように語った。
「旅人は星喰いに会えばたちまち恋におちる。向こうもあんたを好きになる―― 俺は、殺せなかった」
 何と言うべきか私には判らなかった。ただ、私は若く、彼の言葉を本当には理解していなかった。旅への情熱はあつく、見たこともない星喰いへの恋よりも、私は私の星への恋焦がれる思いだけで逸っていた。
「選ぶのはあんただ」
 私は、老人を幾分つめたい目で見ただろう。
「あなたは、『留まる者』になってまで、星喰いとの恋を選んだのですね」
 私の言葉に、老人は初めて笑った。目を伏せて、息だけで短く笑った彼の顔は、一層しわくちゃになったが、何か幸福そうに、私には見えた。



 星喰いは、蜃気楼の中に棲んでいるのだという。
 翼の強い、遠くまで行く鳥のかたちの幻。あるときは、一面の花畑、城壁の美しい街並、そびえ立つ大木、広々とした湖。私の旅路をいろどり、豊かにうるおしてくれるものたち。
 それらの蜃気楼は、幻だというだけで、ちゃんとそこに在る。触れることこそ出来ないが、私は空を征く鳥と、歌声を重ねたこともある。蜃気楼とは、『幻』という存在の仕方をする別の世界で、たまたま同じ空間に居合わせたときに目にすることが出来るのだ――少なくとも私は、そのように捉えていた、だから、星喰いがそこに棲むというのも、なんとなく得心がいった。

 蜃気楼の森。薄暗い木々の隙間を縫って歩く。滴るような深い緑の幻影は、どこかに私の星を喰った獣を隠している。重なり合う枝の切れ目から覗く青空に、
 ――鳥が飛んでいる。
 そして耳を、高く透きとおる歌声がかすめた瞬間、唐突に私は理解した。

 あの鳥が、星喰いなのだと。





3に続く。




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