『千段』

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みじかいおはなし
星喰い(旧作)[完結]


『星喰い・4』 (みじかいおはなし・旧作)

2008.12.11  *Edit 



「ここへ来て」
 手招きをする星喰いがいつから人間の女の姿になっていたのか、もう私は判らなくなっている。
「ここへ来て、私に触って」
 歩き出す。
 世界がゆがむ。
 彼女の白い肌白い手白い髪、腰掛けた木の枝から無造作に垂れ下がる白い足に――手を伸ばしながらも、私は少しためらう。
 白い手。
 羽毛の白さ。
 風に震える羽毛の儚い存在感、幻の存在感でその手はさしのべられていて、私のこの熱く脈打つ掌でつかむことのできるものなど本当はそこにはないのではないかと、強く力を込めた指先が行き場を失ってただ虚しく空気をつかむだけなのではないかと、ふと不安になったのだった。

 だって、
 彼女は蜃気楼なのだ。

「なあに?」
 くすくすくす。
 彼女が笑う、
 空気が揺れる、
 世界が揺れる。

 サア、ハヤク。
 ハヤクサワッテ。

 だから私は、そっと、
 手を伸ばして、指先だけで彼女の手の甲にこわごわ触れた。

 途端。
 世界が、揺れる。
 揺れる。
 私の触れたところから、ゆっくりゆっくり波紋が拡がって、にじむように霧色が視界を支配していく。
 その中で、
 明確な色彩で、
 彼女がかたちを得ていく。
 質量が密度が温度が生まれ、私の指先は手触りを獲得する。
 もはや私の目の前にいるのは、絵にかいた肖像でも、鏡の向こうの影でもなかった。
 私を抱きしめてくる、抱きしめられる肉体だった。

 私は彼女の手を握って強く引いた。しなやかな動作で、私の肩を抱くようにして枝から降りてくる彼女を、抱きとめる。
 女の体は羽根のような衣服をまとってふわりとした感触で、思いのほか軽かったが、その柔らかさも、軽さも、私の知っている世界のものだった。私に、心もとなさではなくて、高揚感を与えるものだった。



5に続く。




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