『千段』

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【戴き物】 『Hide-and-Seek』 * 鳥さまより

2008.12.14  *Edit 

はい。
本日はちょっと珍しいのですが、
オリジナル小説を頂いてしまいましたので!
喜んでアップさせて頂きます。

アイシールド21つながりでお友達になって頂いた、
『それは突然の嵐のように』の鳥さまに、
相互リンク記念ということで、オリジナルSSをリクエストさせて頂きました!
オリジナル頂くのって何年ぶりだろう…
すっごく嬉しいです!!!

鳥さまより頂きましたおはなし、
『Hide-and-Seek』は、「続きを読む」からどうぞ!










目が覚めたら、あたしは見知らぬ部屋のベッドの上で寝ていた。
なんでこんなところに寝てるんだろう。
あたしは知らないところで寝たり、知らない人に着いていったりしたことないんだけど。
もう高校生だけど、あたしは援交なんて遠い話のとこで生活してるし。
起きあがって周囲を見渡しても、見覚えがない。
なんだかウィークリーマンションみたいな感じ。ベッドの他に家具もないし。
起きあがって床に足を着けたときに気がついた。
あたし、靴履いたまま寝てたんだ。
服も見慣れた高校の制服のまんまだ。
ちょっとてかってきたプリーツスカートと、いつものニットカーディガンとシャツと。
リボンじゃなくてネクタイなんだけど、ちゃんと締めたのは入学式の時くらいかも。
それにしても、アメリカじゃあるまいし、靴履いたまま室内ってどうなんだろ。
でも起きたときからちょっと変な感じだから、靴は脱がない方がいいかも、って思ってそのまま歩き回った。
窓の外を見ても見覚えのない場所。
玄関は特に閉まってないし、探しても鍵もない。
本当にどこなんだろ、ここ。
あたしは不安になったけど、このままじっとしてても仕方ないって思って、思い切って外に出た。

外に出ると、ここはうちの近所だって気がついた。
見た事のある建物だ。
あ、ここってワンルームだったんだ。
学校に行く途中、前を通るたびに、立派な建物だからきっと家族で住むマンションだと勝手に思ってた。
日差しはあったかくて、穏やかだ。
家に帰ってもよかったけど、せっかく天気が良いんだし、このまま遊びに行こうかな。
学校までの定期もあるし、と思って気がついた。
あたしなんにも持ってない。
さっきまで気になんなかったけど、鞄も何もないって、変。
ポケットを探ってみたら、定期と携帯はあった。でも財布がない。
お金がないんじゃ遊びに行ってもなあ…。
でもぷらぷら散歩するだけでもいっか、そう思って歩き出した。
駅について自動改札を抜けて、電車に乗る。
席が空いてたから座って、そのまま目を閉じて。
いつもの通い慣れた路線だから、駅に着いたら目も自然と覚める。
ラッシュアワーじゃないから人出もそこそこで、あたしは鼻歌交じりで駅を降りた。
と。
「こら! そこの子、止まりなさい!」
あたしはひゃっと首をすくめた。
ヤバイ、補導員かな。
この辺は学校も多いし遊び場も多いところだから、サボる子は沢山いる。
だから補導員は始終その辺をウロウロしてぷらぷらしてる子を捕まえるのだ。
「まったく! 今は授業中のはずでしょう!」
その声はあたしの前を通り過ぎて、すぐ後ろの子に向かった。
あれは別の学校の子だ。あれ、見つからなかったのかな。
あたしは見つからなかった幸運に胸をドキドキさせながら階段を一段とばしで上がった。

駅を抜けて、いきつけのセレクトショップに入る。
ここはあたしのお気に入りの場所。好きな服も雑貨もいっぱいある。
服を見て、手に取ろうとしたけど、なんだか妙に重くて持ち上がらない。
なんでだろ。まさかハンガーに重りが入ってるのかな?
そんな訳ないよね。きっと万引き防止とかで離れないようになってるんだ。じゃなきゃ洋服がこんなに重いはずないし。
あたしはすぐに諦めて他の雑貨を見て回った。
好きだけど欲しいって思う程の者がなくて、お金がない今の状態ではほっとするような、残念なような。
今日は見慣れた店員さんも忙しいのかあたしを見てもなにも言わない。いいけどね。
その他のショップも回ってみたけど、どれもこれも重くて持ち上がらなくて、変だなって思って歩いていて。
でも、急に気がついたんだ。
あたし、今日起きてから今まで何も食べてないし飲んでない。
なのに、お腹も空かないし喉も渇かない。
変だ、って思った。
だって今日はけっこう暖かいし、あたしはニットカーディガンなんて着てるから暑いのに。
でも、汗も掻かない。
…あれ?
あたしは立ち止まった。
人の流れに逆らわずに歩いていたあたしは、そんなことをしたら絶対に後ろの人とぶつかって迷惑になるはずだった。
でも、後ろから来た人は当然のようにあたしを避けていった。
その人だけじゃない。前からの人も横からの人も、全部全部あたしを避けていく。
ぶつからない。
あたしは胸をぎゅっと押さえた。
だってこんな人混みで、ぶつからないなんてことはない。
あたしみたいな特に派手でもなければ地味でもない、どこにでもいそうな子は人波に紛れることはあっても、こうやって止まってしまえば絶対にぶつかるはずなのだ。
なんで? なんで、みんなあたしにぶつからないの?
あたしは誰かに声を掛けようと思って、手を伸ばした。
そしたらあたしの腕を知らないおじさんがすり抜けていった。
腕を。
あたしの腕にぶつかったはずのおじさんは、全然痛そうでもなく気にしない。
だってあたしも痛くなかった。
すり抜けたんだから。
なんで?
なんであたしの腕はすり抜けたの?!
あたしは闇雲に手を伸ばして道行く人を捕まえようとした。
でも、誰も掴めない。触れたと思ったら突き抜けてしまう。
よくできた立体映像に触れないみたいに。
そんなことありえない。だって今、あたしはここにいて、雑踏に立っているんだもの。
みんなあたしがいないみたいに歩いていく。
あたしにぶつかって、何事もなかったように過ぎていく。
あたしは携帯を取り出した。
手のひらに馴染んだそれは、ストーンをちりばめてキラキラする綺麗なピンク。
それを開くとちゃんとアンテナが立ってた。
開いてすぐ家に掛けた。
なんで不安になったらママの声が聞きたくなるんだろう。
すぐに携帯はつながった。
「ママ?! あたしだけど!」
『―――――――――』
勢い込んで声を掛けたのに、相手は沈黙している。
「ママ? ママ?」
何度も呼びかけても向こうから返事は来ない。
壊れてるのかな、と思ってたら、向こうから物音が聞こえるのに気づいた。
カチャカチャいうそれは、夕飯の準備の音だ。
キッチンで料理している時の、ママの音。
夕方になったら鳴るチャイム、どこかで犬の声。
いろんな雑多な音が混じっていて、この携帯が家につながっているっていうのは判った。
でも、ママが出る訳じゃない。
「パパ? パパはいるの?」
思い直してパパを呼んでみるけど、パパの声も聞こえない。
じゃあ、この電話は誰が手に取ったんだろう。
あたしの家はパパとママとあたしの三人しかいないはずなのに。
ぞっとした。
何度も声を掛けて、でも繋がらない事に諦めて、今度は友達に掛けようとした。
でも、あたしの携帯に友達の電話番号は一個も入ってなかった。
思い出そうとしてもどうしても番号が一つも出てこない。
あたしは怖くなってきた。
すごく怖い。あたし、どうしちゃったんだろう。
いたずらじゃないんだけど、110番に掛けてみる。
いたずらだと思われても、相手が出て話してくれたらそれでいいって思えた。
だけど110番にかけて繋がったのは、ざわざわしている場所だった。
後ろで幾つも電話のベルが鳴ってて、バタバタ走り回る人の足音がする。
他の電話に出て『はい110番です』って言ってるのは聞こえるのに、あたしが声を掛けても誰も返事をしない。
ねえ、じゃあこの電話は誰が取ったの?
手が震えた。
そうだ、学校に行ってみよう。学校に行けば誰かいて、あたしがどこか変だったら言ってくれるだろう。
あたしは駆けだした。
走っても、人混みは苦にならなかった。
だってあたしは今、誰ともぶつかれないんだから。
走って走って、本当なら息が切れて辛いくらい走ったのに全然苦しくなくて、あたしはそれに嬉しいより怖くてたまらなくて闇雲に走った。
でも、どうしても学校にたどり着かない。
迷路に迷ったみたいだった。
通い慣れた学校なのに。あたし、ここに通ってるのに!
なんで? …なんで?!
そうして不意に胸ポケットを探って気がついた生徒手帳の存在。
開いて学校の連絡先を見つける。
ここに掛ければ今度こそ繋がる。
あたしはここにいるよ、そう言える。
あたしはふるえる手で電話番号を押した。
間違えないように、慎重に。
そうしてすぐ繋がった先も、さっきみたいなざわついた空間だった。
「ねえ! 聞いてよ! あたしは近くにいるの! ねえ!!」
叫んでも誰も返事をしない。
ただ同級生らしき子たちの騒ぐ声が聞こえたり、足音が聞こえるだけで。
あたしはなにか聞こえないかと思って耳を澄ますけど、あたしに向かって喋る人はいないし、やっぱりあたしに気づく人はいなかった。

あたし、どうしちゃったの?
みんな、どうしちゃったの?

あたしは起きたときの浮かれ気分なんて忘れて駅に戻った。
さっき他の子を怒った補導員がいたから、その前に立ってみた。
でも、補導員はあたしを見てない。
あたしじゃなくて、遠くでたむろする他の子達を見てる。
駅員さんなら見つけてくれるかな。
あたしは定期を通さずに改札を通り抜ける。
本当なら閉まってしまう扉はあたしをあっさりと通した。
それにあたしの目から涙が溢れた。
あたし、見えないの? あたしがここにいるのに、見えてないの?
締まり掛けた電車の扉に手を掛けたら、まるで何もないみたいにあたしはそこをすり抜けてしまった。
床に転がったけど、誰もあたしに手を差し伸べないし、誰もあたしを見ない。
あたしはそのまま床にうずくまった。
そのまま泣いていても誰も聞こえてないし、見えてない。
すごく家に帰りたかった。
これが悪い夢なんじゃないかって、みんながあたしを騙してるんじゃないかって思いたかった。

あたしは家の最寄り駅を降りて、家に向かって歩き出す。
でも、どこをどう歩いても、あのマンションまで戻ってしまうのだ。
自分の家だ、判らないはずがない。あたし、あの家にずっと住んでたんだもの。

帰らなきゃ。

あたしは携帯でもう一回家に掛けてみた。
でも、携帯から聞こえてくるのはさっきみたいに物音ばかりで、全然誰も答えてくれない。
なんでだろう。
どうして、あたしの声も姿も誰も拾ってくれないんだろう。
あたしはふらふらと脚の赴くままに歩いてマンションに戻った。
さっきいた部屋に戻って、ベッドに身体を投げ出す。
すごく眠かった。
あれだけ歩き回って走っていて、喉も渇かないしお腹も空かないのに、強烈に眠気ばかりが襲ってくる。
あたしはベッドに潜り込もうとして、靴に気がついた。
靴。
思い出した。
起きたときからこれを履いていたんだった。
もしかして、これを履いてたから帰れないのかな。
これ、脱いだら帰れたりして。
昔読んだ童話のヒロインは、魔女の靴を手に入れて帰ったはず。
それとは逆だけど、この変な状況にこの靴がなんか原因なのかもしれない。
あたしは靴に手を掛けるけど、なにかがあたしを押しとどめようとするように感じた。
変だ。
これ、脱いだらいけない気がする。
でも凄く脱ぎたい。脱いで寝ちゃいたい。
じわり、と足の裏が汗を掻く。
大体部屋で土足なんておかしい。
脱がなきゃ。
あたしは勢いよく靴を脱ぎ捨てた。

途端に。
あたしの身体を強風が襲った。
顔を上げていられないくらいの風は、壁一面にある窓が全開になってそこから吹き付けている。
あたしは飛ばされそうになって腰をかがめて踏ん張った。
風が強すぎて、息が出来ない。
どうにか一瞬目を開いて見つめた窓の奥は、真っ黒だった。
夜の暗さなんかじゃない、見た事がないほどの黒だった。
なんで。
どうして。
あたしの中で何回も繰り返された言葉に答えるように、風から声が聞こえてきた。
『どうして』
『なんで』
『こんなことに』
切れ切れのそれはママやパパや友達の声だった。
あたしに向かって言われてる言葉。
悲しむような、悔やむような、涙に掠れたその声に、あたしは忘れていた事実をようやく思い出した。

そうだ。
あたし、あたし―――…

立っていられなくなって、あたしはとうとう風に吹き飛ばされる。
マンションの玄関が自然と開いて、その先も真っ黒。
そこからどこまでも、真っ黒な中を飛ばされながら切れ切れにあたしは呟いた。


「あたし……なんで、自殺なんて、しちゃったんだろ」


答える声はなく、目を開いても閉じても、黒。
あたしは絶望という言葉の意味を、初めて知った。







***   ***   ***   ***

…この、ラストに向けて、じわじわ来る厭な感じがなんとも言えませんね…
このブログで言うと『trapped mice』とか、私も暗いおはなし書くの好きなんですが、
ここまでがつんと直球ダークな奴は、そういや『千段』にはないですね!
こう、流れとか、描写とか、ナチュラルで上手いなあって…!
いつも段取りオンリーになってしまう私は凄く尊敬します!!!
もうひとつアイシでリクエストしてる奴があるので、そちらも楽しみにしてます☆
えへへ…♪ 貰ってばっかりで幸福なワタクシです☆
鳥さま、ほんっっっとうにありがとうございました!!!!



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